小河内ダムが出来た事により湖底へと沈んだ小河内村。
その中の、今は山のふるさと村となっている、
岫沢集落・日指集落ともう一つ、南集落の3つの集落にて
上演されていた「小河内の鹿島踊」という郷土芸能があります。
今回の「東京・奥多摩の伝統芸能ツアー」では、
国指定重要無形民俗文化財にもなっている
この「小河内の鹿島踊」をピックアップし、実施しました。
今回のイベントを企画したキッカケは、
様々な集落の踊り手の皆さんから聞く、
「踊りを奉納する神社へ直接見にくる人が減っている」という声。
駐車場の少なさ、認知度の低さ…。
様々な原因が考えられるのですが、
「じゃあイベントにしたら、まとまって人を呼べないかなぁ…」と
思ったのが、始まりでした。
そんな思いから始まったイベントに
集まってくださった参加者は計19名。
まずはバスで、奉納祭が行われている小河内神社へ出発です!
御神体が納められている神社へ
郷土芸能の舞を奉納しに来るのは全部で三つの集落。
今年は一番最後に奉納される「鹿島踊」に合わせて
スケジュールを調整していたのですが、
運良く、その前に行われている「原集落の獅子舞」も
見学する事ができました。
3匹の獅子が中央で舞う郷土芸能。
手に持つ竹製の楽器「ささら」を持つささら役。前はほぼ見えません。
3匹の獅子と4人のささらで構成されている踊り。
同じ「ささら獅子舞」の名前がついているものの、
集落ごとで、踊りが全く違うのも特徴の一つです。
運動量が多く、技術も必要とされ、
更に被っている獅子の頭の重量もかなりある獅子役。
始まった当初は男性しか許されていなかった獅子役ですが、
近年女性の踊り手も参加しています。
「原集落の獅子舞」の後は、いよいよ「小河内の鹿島踊」。
こちらは白粉をつけた4人の男性が、振り袖を来て舞う踊りです。
歌舞伎が京都で生まれた初期、若衆歌舞伎の流れを汲むと言われており、
そのためか、歌詞の多くに京都の地名が出てきます。
集落に全部で11曲伝わる中、今年の奉納祭では
「月は八幡」「小倉」「かっこ」「桜川」「三拍子」の舞が
披露されました。
最後の曲「三拍子」では、僭越ながら担当者も飛び入りしました。
さて、伝統芸能・郷土芸能にはストーリーがあるものが多いものの、
古語の歌詞のまま唄われているため
ただ聞いているだけでは内容がわかりにくいのが難点です。
そこで今回は、歌詞とその意味、踊りの見どころを
載せた「唄本」というものを作ってみました。
奉納舞に向けての練習にお邪魔する度に
内容チェックをして下さった保存会の皆さまへは
もう足を向けて眠れません…。
最後の感想で、この唄本の事を挙げてくれた方も多くて嬉しかったです。
奉納祭終了後は、「鹿島踊」が生まれた地
岫沢、日指集落跡が残る山のふるさと村へ移動。
特製のお弁当を食べながら、ゆったり休憩してもらうつもりが
踊りについての怒濤の質問タイムの場となりました(苦笑)
昼食後は、インタープリターによる歴史ウォークへ。
歴史を感じる大きなカキノキ、
食べられる木の実をつける木々。
当時の家を支えていた、今も残る石垣や様々な史跡の数々。
それらはすべて、この地に住み「鹿島踊」を現在へと伝えた
人々の暮らしの証でした。
「鹿島踊」を奉納していた、旧加茂神社。
今も水が流れている、当時の井戸。
集落の暮らしの跡を辿りながら、
皆さんのんびりと自分のペースで歩かれたようでした。
当時、2つの集落を繋いだ「尾花坂」。
舗装はしているものの、当時と同じ道、同じ山並みの景色。
日指集落から、岫沢集落まで降りてきた皆さんが
ほっと一息つけるように、おやつの準備をしてみたり。
(お菓子のセレクトは奥多摩名物「山の呼び声」)
押し葉のお菓子敷き、桜の木のコースター、
映ってないけど(笑)熱々のほうじ茶で皆さん一休み。
のんびりとお茶をしながら今日の感想などを、
参加者の皆さんと話していると、解散の時間までもう少し。
最後のまとめに、私がこのイベントを企画したキッカケの話と、
その根底にある「奥多摩の郷土芸能の力になりたい」という思いを
少しだけ話させて頂きました。
踊り手になるなど、郷土芸能そのものに直接関わらなくとも、
「見に来る」「こんな郷土芸能がある事を知る」というだけでも、
地域の郷土芸能を守る、伝えていく力となります。
それは、参加者の方が印象深かった事として挙げていた
「踊り手さんにお礼を言ったら、
逆に「わざわざ来てくれてありがとう」と言われた」
というエピソードにも表れているかもしれません。
奥多摩には「鹿島踊」だけでなく、
ささら獅子舞や神楽、車人形など、様々な郷土芸能があります。
特にささら獅子舞は、8月毎週のように奉納祭が行われており、
日によっては一日で3つもの郷土芸能を観る事が出来たりします。
今回の企画を通して、奥多摩の郷土芸能に
興味をもっていただいた参加者の皆さんと
ばったりどこかの奉納祭でお会いするかもと思うと、
考えるだけで楽しく、そしてとてもとても嬉しく思います。
参加者の皆さま、楽しい時間を本当にありがとうございました。
また是非、奥多摩のどこかの神社でお会いしましょう!
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「東京・奥多摩の伝統芸能ツアー」担当:原島(かおりぃ)